無骨で男らしいミリタリーウェアとして、アメカジファンから根強い支持を集めているタンカースジャケットですが、購入を検討して検索してみると ダサい というキーワードが出てきて不安になったことはありませんか。
映画の衣装としても有名で、ヴィンテージ市場でも高値で取引される名作であることは間違いありません。しかし、その独特なシルエットや色味から、一歩間違えると 野暮ったい 印象を与えてしまうのも事実です。
そこで本記事では、タンカースジャケットがなぜダサいと言われてしまうのか、その理由を深掘りしつつ、実際に愛用している人たちのリアルな評判や、おすすめできる人・できない人を解説します。これから手に入れようか迷っている人はぜひ参考にしてください。
タンカースジャケットとは?
正式名称は Jacket, Winter, Combat といいます。その名の通り、第二次世界大戦中にアメリカ陸軍の戦車兵、つまりタンカース(戦車乗り)向けに開発された冬用の戦闘服です。
狭い戦車の内部で機敏に動けるように、極端に短い着丈と、腕を動かしやすくするための背中のプリーツ(アクションプリーツ)が採用されているのが最大の特徴です。素材は耐水・耐風加工が施されたコットンツイルで、裏地には26オンスのウールブランケットが使われており、高い防寒性を誇ります。
映画『タクシードライバー』でロバート・デ・ニーロが着用したことで世界的に有名になり、近年ではブラッド・ピット主演の『フューリー』でも登場しました。単なる軍服を超えて、映画ファンやファッションフリークにとっても特別な意味を持つジャケットです。
タンカースジャケットがダサいと言われている理由
名作と名高いタンカースジャケットですが、なぜ一部ではダサいと言われてしまうのでしょうか。SNSの声やYouTubeのレビューなどを徹底的にリサーチしたところ、このアイテム特有の理由が見えてきました。
シルエットが独特すぎて着こなしが難しい
タンカースジャケットは戦車の中で座った姿勢で活動することを前提に作られています。そのため、着丈はベルトが隠れるか隠れないかというくらい短く設定されている一方で、身幅や腕周りは非常に太く作られています。
この独特なボックスシルエットは、現代の洗練されたファッションに見慣れた目からすると、寸胴でスタイルが悪く見えてしまうことがあります。特にサイズ選びを間違えて大きめのサイズを選んでしまうと、YouTubeのレビュー動画などでも指摘されている タタミダボ感 という現象が起きます。
これは畳の上でくつろいでいるような、締まりのないダボっとしただらしない印象を指す言葉のようですが、まさにこの野暮ったさがダサいと言われる大きな要因です。身長に対して横幅ばかりが強調されてしまい、丸っこい雪だるまのような見た目になってしまうのです。
作業着やおじさんっぽい印象が強い
タンカースジャケットの代表的な色は、カーキやライトオリーブドラブといった土臭い色味です。この色が、日本においては昔ながらの工場の作業着や、現場作業員のアウターを連想させることがあります。
ナイロン製のMA-1のような光沢感や都会的な雰囲気がないため、コットン素材のクタッとした質感が、どうしても生活感のある おじさんのジャンパー に見えてしまうのです。特にボトムスに太めのチノパンや色落ちしたデニムなどをなんとなく合わせてしまうと、休日のパチンコ屋にいそうなお父さん という雰囲気になりがちで、これがおしゃれとは対極のダサいという評価につながります。
映画のイメージが強すぎてコスプレに見える
映画『タクシードライバー』の影響力は絶大です。劇中で主人公のトラヴィス・ビックルが着ていた、ワッペンでカスタムされたモデル(通称トラヴィスモデル)は非常に人気があります。
しかし、このインパクトが強すぎることが裏目に出ることもあります。ワッペンがベタベタと貼られたジャケットを街中で着ていると、映画を知らない人からは 派手で子供っぽい と思われたり、逆に映画を知っている人からは 完全に映画のコスプレだ と思われたりするリスクがあります。
あの狂気じみた主人公のキャラクターがあってこその格好良さであり、一般人がそのまま真似をして日本の街を歩くと、周囲から浮いてしまい、痛々しい、ダサいと感じられてしまうことがあるのです。
タンカースジャケットの評判・口コミ
実際にタンカースジャケットを着用している人たちはどう感じているのでしょうか。SNSや通販サイト、掲示板などのリアルな声を調査し、メリットとデメリットを整理しました。
良い口コミ
- 30年前に着ていたタンカースとはサイズ感が違ったが、生地感や縫製が良くて長く愛用できそうだ
- ウール100%のリブや、裏地のウールブランケットのおかげで、見た目以上に保温性が高くて暖かい
- アクションプリーツが入っているおかげで、腕を前に出す動作がとても楽で動きやすい
- 余計な装飾がないシンプルなデザインなので、流行り廃りに関係なく長く着られるベーシックなアイテムだ
- ナイロン製のフライトジャケットとは違う、コットン特有の経年変化や味を楽しめるのが魅力だ
悪い口コミ
- サイズ選びが非常に難しい。表記サイズで選んだらブカブカすぎて、サイズ交換をしてもらう羽目になった
- 裏地がウールブランケットなので、肌着の上に直接着るとチクチクするし、ジャケット自体がずっしりと重い
- 着丈が短すぎるので、インナーに着るシャツやスウェットとのバランスをとるのが難しい
- カーキ色は顔色と同化しやすく、合わせるパンツによっては本当にただの作業員に見えてしまう
- 洗濯をすると縮みが出やすく、メンテナンスに気を使う
タンカースジャケットがおすすめな人
ダサいという評価がある一方で、熱狂的なファンも多いタンカースジャケット。どのような人であれば、このジャケットの魅力を最大限に引き出せるのでしょうか。
ミリタリーの機能美や歴史的背景にロマンを感じる人
タンカースジャケットのデザインはすべて機能に基づいています。なぜポケットが高い位置にあるのか、なぜ背中にプリーツがあるのか。そうした 戦車兵のための工夫 という背景を知り、そこにロマンを感じられる人には最高の相棒になります。
単なるファッションアイテムとしてではなく、歴史的な資料を着る という感覚で楽しめる人であれば、多少の野暮ったさも 本物の証 として愛せるはずです。
アメカジのサイズ感を熟知している人
アメカジ特有の ジャストサイズで着る かっこよさを理解している人におすすめです。最近の流行であるオーバーサイズで着ようとすると失敗しますが、自分の体型に合ったジャストサイズを選び、男らしい逆三角形のシルエットを作れる人であれば、非常にスタイリッシュに着こなせます。
身長167cmで62kgくらいの体型であれば、36(Sサイズ)を選んでビシッと着る。こういったサイズ選びの美学を持っている人に向いています。
経年変化(エイジング)を楽しめる人
ナイロン素材とは違い、コットンツイルは着用を重ねるごとに生地が馴染み、色褪せ、パッカリング(縫い目のシワ)が出てきます。新品の時よりも、着込んでクタクタになった時の方がかっこいいのがタンカースジャケットです。
ジーンズのように、自分の生活に合わせて服を育てていきたいと考えている人には、これ以上ない選択肢となります。
タンカースジャケットがおすすめできない人
逆に、購入して後悔してしまう可能性があるのはどのような人でしょうか。
流行のオーバーサイズシルエットを求めている人
今のトレンドのような、肩が落ちて全体的に丸みのあるビッグシルエットのアウターとしてタンカースジャケットを選ぼうとしている人はやめた方がいいでしょう。
身幅が広いので一見オーバーサイズ風に見えますが、着丈が極端に短いため、現代的なビッグシルエットとは全く異なるバランスになります。単に サイズを間違えた人 に見えてしまう可能性が高いです。
軽くて快適なアウターが欲しい人
最新のダウンジャケットや高機能フリースのような、軽くて暖かくて手入れが楽なアウターに慣れている人にはおすすめできません。
26オンスのウールブランケットは重たく、表地のコットンは雨に濡れれば重くなります。現代の衣服と比べれば機能的に劣る部分も多い 不便な服 です。その不便さを愛せない人にとっては、ただの重たくて肩が凝るジャケットになってしまいます。
コーディネートを考えるのが面倒な人
とりあえず羽織ればサマになる服ではありません。インナーの丈感、パンツの太さ、靴のボリュームなど、全身のバランスを計算しないと、前述の通り 作業員 や 休日のお父さん になってしまいます。
服の組み合わせを考えるのが好きで、鏡の前であれこれ試行錯誤するのが楽しいと思える人でないと、かっこよく着こなすのは難しいアイテムです。
タンカースジャケットのおすすめポイント
ここでは、他のミリタリージャケットにはない、タンカースジャケットならではの魅力的なポイントを解説します。
唯一無二のアクションプリーツ
背中の肩部分に深く刻まれたアクションプリーツは、タンカースジャケットのアイデンティティです。腕を前に突き出すとこのプリーツが開き、背中の生地が突っ張るのを防ぎます。
YouTubeのレビューでも、このプリーツが縫われている分、すっきりとした感じで着られる と評価されています。機能性だけでなく、バックスタイルに独特の立体感を与え、背中で語る 男らしさを演出してくれます。
こだわり抜かれたパーツとディテール
レプリカブランドから出ているタンカースジャケットは、ジッパーやリブなどの細部へのこだわりが凄まじいです。例えば、ジッパーには大戦当時と同じ コンマー社 や タロン社 の復刻モデルが使われており、素材も真鍮製で経年変化を楽しめます。
リブも継ぎ目のない輪編みのウールリブを採用しているものが多く、手首へのフィット感が抜群です。こうした細かなパーツの一つ一つが、安物のジャケットにはない重厚なオーラを醸し出します。
ブランドごとの解釈の違いを楽しめる
ひとくちにタンカースジャケットといっても、ブランドによって解釈が異なります。例えば、バズリクソンズとリアルマッコイズを比較すると、背中のステンシルの塗料の厚みや、リブの素材配合(ウール100%か混紡か)、ジッパーの種類などに微妙な違いがあります。
バズリクソンズの方が実物に近いコンマージッパーを採用していたり、リアルマッコイズは着やすさを考慮してジッパーの位置をアレンジしていたりと、それぞれのブランドが考える 理想のタンカース を比較して選ぶ楽しさがあります。
タンカースジャケットのおすすめアイテム
最後に、タンカースジャケットを購入するなら絶対に外せない、代表的なブランドとモデルを紹介します。
バズリクソンズ(Buzz Rickson’s) Type TANK PATCH POCKET / SLASH POCKET
初めてタンカースジャケットを買うなら、まずはバズリクソンズがおすすめです。徹底的なヴィンテージ研究に基づきながらも、比較的良心的な価格設定で提供されています。
パッチポケットの初期型と、スラッシュポケットの後期型の両方をラインナップしており、特にスラッシュポケットモデルは映画『タクシードライバー』のモデルとしても人気です。ジッパーやリブの品質も非常に高く、コストパフォーマンスに優れた一着です。
ザ・リアルマッコイズ(The REAL McCOY’S) JACKET, COMBAT, WINTER
より質感や素材のグレードにこだわりたい人には、リアルマッコイズがおすすめです。価格は高くなりますが、アルパカなどの高級素材を贅沢に使用したり、独自の染色技術で当時の色味を再現したりと、妥協のない作り込みが魅力です。
中古市場でも人気が高く、状態が良いものは高値で取引されるため、資産価値のある一着として持っておくのも良いでしょう。
トイズマッコイ(TOYS McCOY) TAXI DRIVER WINTER COMBAT JACKET
映画『タクシードライバー』の世界観にどっぷりと浸かりたいなら、トイズマッコイ一択です。デ・ニーロが着用していた衣装を完璧に検証し、裏地のキルティング仕様や、ポケットの袋地の形状、そして キングコング・カンパニー のパッチの刺繍に至るまで、劇中の仕様を忠実に再現しています。
これは単なる服ではなく、映画のプロップ(小道具)レプリカとしての側面も強いため、映画ファンにとってはこれ以上ない宝物になるはずです。
まとめ
タンカースジャケットは、その特徴的なシルエットや色味から、確かに着こなしの難易度が高いアイテムです。サイズ選びや合わせ方を間違えると、ダサいと言われてしまうリスクも孕んでいます。
しかし、その 野暮ったさ こそが、戦場という極限状態から生まれた機能美であり、本物の男服としての魅力でもあります。流行に流されず、自分の体型に合ったサイズを選び、デニムやチノパンとシンプルに合わせる。そうすれば、ダサいという評価など気にならないほどのかっこよさを手に入れることができるはずです。
安易なトレンドファッションにはない、骨太なスタイルを求めているのであれば、ぜひタンカースジャケットに挑戦してみてください。着込むほどに自分の身体に馴染み、手放せない相棒になってくれることでしょう。

