クラシックなアウターの代表格として、長年愛され続けているカーコート。
その名前の通り、もともとは自動車の運転用に設計された、はっきりとしたルーツを持つ服です 。昔は防寒のために重い革やツイードで作られていましたが 、今ではY’2 LEATHER(ワイツーレザー)の軽量な馬革 や、MooRER(ムーレー)の高機能な撥水素材 まで、大きく進化しています。
ただ、そのクラシックな雰囲気ゆえに、いざ買おうとすると「もしかしてダサい?」「今着ると時代遅れに見えないか?」「丈が中途半端で、野暮ったいおじさんコーデになりそう」といった不安の声も聞かれます。
実際にSNSなどを見ると、シルエットが終わった、あの雰囲気は恥ずかしい、といった厳しい評価も目にします。
そこでこの記事では、カーコートがなぜ一部でダサいと言われてしまうのか、その理由を掘り下げて解説します。
集めた評判や口コミを分析し、カーコートが「おすすめな人」と「おすすめできない人」の違いも紹介します。「自分に似合う、長く愛せる一着が欲しい」という人は、ぜひ参考にしてください。
カーコートとは?
カーコートとは、その名の通り「自動車のためのコート」です 。
歴史は古く、1900年代初頭にまでさかのぼります。当時は屋根のないオープンカーが多かったため、運転手は寒さや風、未舗装路のホコリから身を守る必要がありました 。カーコートは、こうした環境に対応する防寒着として生まれました。
初期のモデルは、もちろん防寒性が第一。厚手のツイードやファー、重厚なレザーで作られた、長くてゆったりしたデザインが主流でした 。当時は自動車を持つこと自体がステータスであり、高価なカーコートも富の象徴だったのです 。
このカーコートに転機が訪れたのは1960年代頃。車にヒーターやエアコンが標準装備され始めると 、カーコートに求められる役割も変わります。重厚な防寒着から、より軽快で実用的なアウターへと進化しました。
最大の変化は「着丈」です。
運転席に深く座るとき、コートの長い裾が邪魔にならないよう、従来のロング丈からヒップが隠れる程度の「腰下丈」へと短くされました 。
この「運転」という具体的な目的から生まれた、他にない「腰下丈」こそが、カーコートの最大の特徴です。そして皮肉なことに、この特徴が、現代でダサいと呼ばれる原因にもなっています。
戦後は、軍用コートのデザインが取り入れられるなどデザインも多様化し 、素材もナイロンやコットンなど実用的なものが増え、一般的なアウターとして普及していきました 。
カーコートがダサいと言われている理由
カーコートがダサい、時代遅れと評されてしまう背景には、このアイテム特有の3つの特徴があるようです。これらは、カーコートの歴史そのものと深く関わっています。
中途半端な「腰下丈」が野暮ったく見える
カーコートがダサいと言われる最大の理由は、その独特な「腰下丈」にあるようです 。
運転席に座るために最適化されたこの着丈は、今のファッションから見ると、かなり中途半端に映ってしまいます。
ショート丈のブルゾンのように脚を長く見せたり、ロング丈のコートのように体型を隠して上品に見せたりすることが難しいのです。
結果として、どうしても胴長短足のシルエットに見えやすく、スタイルが悪く見えてしまう危険性があります。
特に、今のトレンドであるワイドパンツやボリュームのあるボトムスと合わせた場合、その相性の悪さが目立ってしまいます 。
この丈感が、SNSなどで「野暮ったい」「センスがない」と酷評される原因のようです。自動車の運転という機能を優先したデザインが、現代の着こなしと合わなくなってきているのかもしれません。
レザータイプの「ガチすぎる」雰囲気が恥ずかしい
カーコート、特にレザー製のモデルは、特定のカルチャーと強く結びつきすぎています 。これがダサいと言われる2つ目の理由です。
Bilt Buck やSchott のような、本格的な馬革やリアルムートンを使った重厚なモデル は、単なるファッションというより、ロックンロールやバイカーといった、特定のカルチャーの「衣装」としての側面が強いです 。
もちろん、そのカルチャーが好きな人が着るなら格好良いのですが、そうでない人が日常の街着として取り入れると、雰囲気が重すぎて浮いてしまいがちです。
「コスプレみたいで恥ずかしい」「気合が入りすぎている」という印象を与えてしまうかもしれません。
また、Bilt Buckの本格的な馬革 は物理的にとても重いものが多く 、その重さが、現代の軽快なファッションの流れから「終わった」「時代遅れ」という印象を強めてしまいます。
素材によって「おじさん臭い」か「安っぽい」か二極化する
カーコートはシンプルなデザインなので、素材の質感がそのまま印象を決定づけます。これが3つ目の理由です。
カーコートは、非常に高価で本格的なものか、あるいは安価でチープなものか、両極端になりがちです。
まず、おじさん臭いという点です。
カーコートは1960年代に大衆的なアウターとして普及した歴史があります 。そのため、安価なコットンやポリエステルで作られたカーコートは、当時の「サラリーマンの通勤着」や「休日のお父さんのアウター」といったイメージと結びつきやすいのです。
次に、安っぽいという点です。
このシンプルなデザインを、安価な合成皮革 などで作ると、素材の粗悪さ(ビニールのような光沢や薄っぺらさ)を隠せません。結果、一目で安っぽいと分かってしまいます。
結局、Bilt Buck やMooRER のような本格的で高級なものを選ぶか、さもなければ「安っぽい」「おじさん臭い」という評価を受け入れるか、どちらかになりがちです。
ちょうどいいバランスの一着を見つけるのが難しいアイテムと言えます。
カーコートの評判・口コミ
リサーチで見つけたカーコートに関する評判や口コミを、良い点と悪い点に分けて整理します。
良い口コミ
- Bilt Buck の馬革は重いけれど、革の質感とスペイン産ムートン の防寒性は本物。一生モノのアウターだと思う。
- Y’2 LEATHERの25周年モデル はすごい。馬革 なのに驚くほど軽くて、春や秋にも羽織れる 。
- レザーカーコートの楽しみはやっぱり経年変化。Y’2モデルの「茶芯」 が出てきたり、Bilt Buckの腕にシワ が刻まれたりするのが最高。
- MooRERのカーコート は別格。撥水ポリエステル で雨の日もOKなのに、ダブルのデザイン のおかげでスポーティすぎず品がある。
- ブルゾンより大人っぽく、コーチジャケットより品がある という表現がしっくりくる。この丈感が大人の休日にちょうどいい。
悪い口コミ
- 憧れて本格的な馬革のカーコート を買ったけど、重すぎて肩が凝る 。格好良いのは確かだけど、日常使いには向かない。
- ロカビリー とかバイカー のカルチャー感が強すぎて、普通の街着としては浮いて恥ずかしい。友達に「何を目指してるの?」と言われた。
- あの腰下丈 が本当に難しい。トレンドのワイドパンツ と合わせたら、見事に胴長短足になって「終わった」と思った。
- ネットで安い合皮 のカーコートを買ったら、写真と違ってテカテカでビニールみたいだった。安物買いの銭失い。
- 古着屋で良いものを見つけても、サイズ感を間違えるとおじさん臭くなる。「昔のお父さんみたい」と家族に言われて着られなくなった。
カーコートがおすすめな人
ダサい理由や口コミをふまえると、カーコートはすべての人に似合うわけではないようです。
ですが、以下のような人には、他のアウターには代えがたい一着になるでしょう。
ヴィンテージや特定のカルチャーを深く愛する人
このタイプの人々は、ダサい理由として挙げた「ガチすぎる雰囲気」を、むしろ本物の証として好意的に受け止められます。
Bilt Buck やY’2 Leather のような重厚な馬革や、1930年代の歴史を感じさせるディテール こそが価値だと理解しています。
彼らにとってカーコートは服ではなく、ロカビリー やホットロッド といったカルチャーそのものです。そのため、不便でしかない重さや扱いにくさ すらも、個性として愛せるのです。
レザーの経年変化を育てたい人
このタイプの人々は、服を消費するのではなく「育てる」ものとして捉えています。
服は新品の状態がゴールではなく、何年も着込むことで自分だけの一着に完成していくプロセスを楽しめます。
Y’2 LEATHERの茶芯 が徐々に現れたり、Bilt Buckの馬革 に持ち主の体のシワが記憶されたりする(エイジング)過程に、価値を見出せる人です。
トレンドとは違う、機能的で上品なアウターが欲しい人
このタイプの人々は、カーコートのダサい側面(重い、おじさん臭い、ガチすぎる)をうまく避け、利点だけを上手に取り入れようとします。
彼らが選ぶのは、MooRER のような、撥水ポリエステル などを使った現代的なモデルです。
カーコートの腰下丈 が持つ、ブルゾンよりも大人びて見える という利点はそのままに、素材とデザイン(MooRERのダブルフロント など)で上品さをプラスし、古臭さを消した「大人のための機能着」として活用します。
カーコートがおすすめできない人
一方で、以下のような考えを持つ人には、カーコートはあまりおすすめできません。
購入後に「ダサい」「恥ずかしい」と後悔する可能性が高いです。
トレンドや着回し力を最優先する人
カーコートは定番ではありますが、トレンドのアイテムではありません。
特にダサい理由の一つである中途半端な丈 は、今のトレンドであるワイドパンツ やオーバーサイズの服とは相性が悪く、着回し力は低いと言わざるを得ません。
どう着てもオシャレに見える服ではなく、むしろ着こなしを間違えるとすぐにセンスがないと思われる、上級者向けのアイテムです。手持ちの服で簡単に着回したい人には不向きです。
アウターに軽さや手入れの楽さを求める人
本格的なレザーカーコートの魅力は、その重厚感です 。
Y’2 LEATHERの25周年モデル のような軽い馬革も存在しますが、これは例外です。基本的には、上質なレザーカーコートほど重くなります。
日常的に軽くて楽なアウターを求めている人にとって、本格的なレザーカーコートの重さ や、定期的なメンテナンスは苦痛に感じるかもしれません。
服の背景やカルチャーに興味がない人
これが最も重要なポイントかもしれません。
なぜBilt Buck のコートは重いのか? なぜムートンの襟 がついているのか?
その背景にある1930年代の防寒着 という歴史やカルチャー に興味がない人が形だけを真似すると、典型的な「ガチすぎて恥ずかしい」例になってしまいます。
安っぽい ものやおじさん臭い ものを避け「本物」を選ぶなら、その服が背負ってきた歴史ごと受け入れる覚悟が必要です。それができない人にはおすすめできません。
カーコートのおすすめポイント
カーコートが持つダサいリスクを理解した上で、それでもなお魅力的なポイントを3つ紹介します。
自動車の歴史と共にある「本物」の背景
カーコートは、単なる思いつきで生まれた服ではありません。
1900年代のモータリゼーション という、生活が大きく変わった時代の「必要性」から生まれたものです。
エアコンのない時代の防寒着であり 、車を持つ者のステータスでもあった という本物の歴史が、他のアウターにはない深みを与えてくれます。
素材の選択肢が広く、スタイルを分けられる
ダサい理由として「二極化」を挙げましたが、裏を返せば「選択肢の幅が広い」ということです。自分のスタイルに合わせて、素材を戦略的に選べます。
・ヘビーレザー : Bilt Buckのように、歴史やカルチャー も含めて着こなす。 ・ライトレザー : Y’2 LEATHERのように、軽快なレザージャケットとして着る。 ・テクニカル素材 : MooRERのように、上品な機能着として着る。 ・ワーク素材 : Lavenhamのように、リラックスしたワークスタイルとして着る。
このようにスタイルに合わせて素材を選べば、ダサい、おじさん臭いといった評価を避け、最適な一着を見つけられます。
「腰下丈」が作る大人の余裕
ダサい理由として挙げた中途半端な丈 も、視点を変えれば「絶妙な丈」と言えます。
あるメディア が指摘しているように、その丈感はブルゾンよりも大人顔で、コーチジャケットよりも品があるという、他のアイテムでは替えがきかない独自のポジションにあります。
短すぎず、長すぎない。この独特の丈感こそが、若者のような軽薄さとは一線を画し、大人の男性にふさわしい落ち着きと余裕を演出してくれます。
カーコートのおすすめアイテム
最後に、前述した素材の選択肢に基づき、ダサいとは言わせない、具体的なおすすめアイテムを4点紹介します。
【本格・防寒】Bilt Buck Lot.501 ショールカラー ホースハイドコート
「ガチすぎる」というダサい理由を、そのまま「最高の魅力」に変えた、本格派の頂点ともいえる一着です 。
1930年代のヘビーアウターをイメージしたデザイン で、素材には40時間のミリング加工を施した馬革 を使用。
襟にはスペイン産の最高級ムートン 、裏地にはウールツイード を使い、圧倒的な防寒性を誇ります。その重厚感は、本物のカルチャーを愛する人のためのものです。
【本格・軽量】Y’2 LEATHER
本格的なレザーの質感と、現代的な軽さを両立させた革新的な一着です。
「馬革で軽い」 という驚きを実現した独自の革を採用しており、従来のレザーカーコートの重さ が苦手だった人には最適です。
革はもちろん茶芯仕様 で、経年変化も楽しめます。裏地はリネン100% で、重い冬のアウターとしてだけでなく、春や秋にも羽織れる軽快さが魅力です 。
【上品・機能】MooRER 撥水ポリエステル カーコート
「おじさん臭い」というダサい理由を、現代的な上品さで克服した大人のためのモデルです。
メディア でも紹介された、MooRERの撥水ポリエステル生地 を使用。フードは着脱可能で、機能性も抜群です 。
最大のポイントは、スポーティな素材感を格上げするダブルのフロントデザインです 。これにより、単なる機能着ではない、洗練された上品なアウターとして完成されています。
【カジュアル・ワーク】Lavenham コットンツイル カーコート
キルティングジャケットで有名な英国の名門 が、カーコートをブランドらしいワークスタイル として再解釈した一着です。
素材はタフなコットンツイル 。ゆったりしたボックスシルエットで、本来の目的である車に座った状態 はもちろん、現代のリラックスした着こなしにも合います。
襟とパイピングには、おなじみのコーデュロイ を使用。ラフに羽織れる品の良いコーチジャケット として、日常使いに最適です。
まとめ
カーコートがダサい、時代遅れと言われてしまうのには、はっきりとした理由があるようです。
運転用に設計された中途半端な丈が現代の服に合わせにくいこと 。本格的なレザータイプが持つカルチャー性 が強すぎること。そして、安価な素材 を選ぶと、おじさん臭く見えたり安っぽく見えたりすること。これらが主な理由です。
しかし、これらダサいとされる理由は、アイテムが持つ本物の歴史 や機能性 の裏返しでもあります。
重要なのは、流行に流されるのではなく、自分のスタイルを確立し、それに合った適切な一着を選ぶことです。
カルチャーごと愛するならBilt Buck のような本格派を。レザーの経年変化を軽快に楽しみたいならY’2 LEATHER を。上品な機能着が欲しいならMooRER を選ぶと良いでしょう。
カーコートは、誰もが簡単に手を出せるトレンドアイテムではありません。
しかし、その背景を理解し、自分の目的に合わせて選べば、「ブルゾンより大人で、コートより軽快」 という、他にはない大人の風格を手に入れられるアウターなのです。


