中世の騎士が身につけた鎧(かっちゅう)をモチーフにしたアーマーリング 。指の関節を覆う重厚なデザインは、多くのファッション好きの心を掴んできました。
特にイギリスのブランド、ヴィヴィアン・ウエストウッドが火付け役となり、日本では2000年代のカルチャーシーンを象徴するアイテムとして一世を風靡した歴史があります 。
しかし、その独特なデザインと流行の背景から、一部では「アーマーリングはダサい」「もう時代遅れだ」といった厳しい声も少なくありません。「ゴツゴツした感じが今見ると痛い」「なんだか安っぽいイメージ」など、ネガティブな評価も確かに存在します。
そこで本記事では、アーマーリングがダサいと言われてしまう理由を、SNSや口コミのリアルな声を基に探っていきます。
さらに、アーマーリングが似合う人・似合わない人の特徴もあわせて解説します。「アーマーリングが欲しいけど、もしかしてダサい?」と不安に感じている人は、ぜひ参考にしてください。
アーマーリングとは?
アーマーリングは、その名前の通り「Armor(鎧)」をデザインした指輪のことです。中世ヨーロッパの騎士が手を守るために着用した、甲冑の指部分(ガントレット)がモチーフになっています 。
一般的な指輪とは違い、指の第一関節と第二関節、モデルによっては指全体を覆うほど大きいのが特徴です。パーツが連なって関節のように動くため、指を曲げることもできます。
もともとはシルバーアクセサリーのハード系デザインの一つでしたが、ヴィヴィアン・ウエストウッドがパンクファッションに取り入れたことで、世界的に知られるようになりました。
日本で爆発的に広まったのは、漫画『NANA』の影響が非常に大きいようです 。主人公がヴィヴィアン・ウエストウッドのアーマーリングを愛用していたことから、当時の若者の間でロックやパンクの象徴として大流行しました。
そのため、アーマーリングは単なるアクセサリーとしてだけでなく、2000年代の特定のカルチャーと強く結びついたアイテムとして認識されています。
アーマーリングがダサいと言われている理由
あれほど一世を風靡したアーマーリングが、なぜ「ダサい」とまで言われてしまうのでしょうか。それには、アイテムが持つ特有の歴史とデザイン性に、いくつかの理由があるようです。
『NANA』ブームのイメージが強すぎて「時代遅れ」
アーマーリングがダサいと言われる最も大きな理由は、その強すぎる「時代性」にあるようです。
特に日本では、アーマーリング=『NANA』のイメージがあまりにも強く定着しています 。SNSなどを見ると「懐かしい」「NANAが流行った時にみんな着けてた」といった声が非常に多く、まさにその時代を象徴するアイテムでした。
この「懐かしさ」が、現在のファッションに取り入れる上での壁となります。
流行は繰り返しますが、あまりにも一時代を象徴しすぎたアイテムは、その時代の「遺物」のように見えてしまう危険があります。「あの頃に流行ったものを、今もまだ?」という文脈で捉えられ、結果として「時代遅れ」「センスが古い」「終わったアイテム」という印象を与えてしまうのかもしれません。
ゴツい見た目が「中二病」っぽくて「痛い」「恥ずかしい」
鎧というモチーフは、日常生活にはない「戦闘的」で「非日常的」なデザインです 。そのゴツゴツとした重厚な見た目は、現代の一般的な服装の中では、どうしても浮いてしまいがちです。
この「浮いてしまう」感覚が、「痛い」「恥ずかしい」といったネガティブな評価に直結しているようです。
SNSの口コミでは、「いい大人が着けていると痛々しい」「中二病をこじらせたみたいで恥ずかしい」といった辛辣な意見も見受けられます。
大人のファッションがTPOや調和を重視するのに対し、アーマーリングは良くも悪くも「主張」が強すぎます。その過剰な装飾性が、見る人によっては「痛い」と感じさせてしまうのです。
特にシンプルな服装やオフィスカジュアルの中では、コスプレ感が際立ってしまい、TPOをわきまえない「センスがない」アイテムと見なされがちです。
安価な模倣品の多さが「安っぽい」イメージを助長
『NANA』ブームによる爆発的な人気は、市場に大量の模倣品や安価な類似品を生み出す結果となりました。
ヴィヴィアン・ウエストウッドの正規品はシルバー925を使用しており、価格も4万円以上する高級アクセサリーです 。しかし、実際にブームを支えたのは、数千円、あるいはそれ以下で買えた合金製などの安価なレプリカでした。
この結果、「アーマーリング=安物」というイメージが広く定着してしまったようです。
今、たとえ本物の高価なシルバー製アーマーリングを身につけていたとしても、詳しくない人からは「ああ、昔流行ったあの安っぽい指輪ね」と誤解されてしまうリスクがあります。
正規品の持つ重厚感を知らない層からは、ひとまとめに「安っぽい」「子供のおもちゃみたい」と評価されてしまう。このイメージも、ダサいと言われる一因でしょう。
実用性が低く「邪魔」な点が、TPOに合わない
デザイン面だけでなく、機能面での評価も厳しいものがあります。アーマーリングは指の広範囲を金属で覆うため、日常生活において「とにかく邪魔」という現実的な問題が指摘されています。
YouTubeのレビュー動画やSNSの口コミでは、「重くて指が疲れる」「スマホが絶望的に操作しにくい」「ペットボトルの蓋が開けられない」「パソコンのキーボードが打ちにくい」「夏場は関節部分が蒸れてかゆい」といった実用面での不満が溢れています 。
この「実用性のなさ」は、単に不便というだけではありません。
スマホを操作したり、カバンから鍵を取り出したりといった何気ない動作がぎこちなくなり、周りから見て「あの人、すごく不便そうだな」という印象を与えてしまいます。
その不格好な所作が、洗練されていない「野暮ったい」雰囲気につながるのです。ファッションにおいて、実用性をあまりにも無視したアイテムは、「センスがない」と判断される原因にもなります。
アーマーリングの評判・口コミ
アーマーリングに関する実際の評判や口コミをまとめました。良い評価と悪い評価がはっきり分かれており、非常に人を選ぶアイテムであることがわかります。
良い口コミ
- ヴィヴィアンのアーマーリングはやっぱりカッコいい。NANA世代だけど、今見ても色褪せないデザイン。
 - 地雷系やゴシック系のコーデにはこれ以上ないほどハマる。この指輪がコーデの主役になってくれる。
 - e.m.(イーエム)のアーマーリングは、パールが付いてて上品。ゴツすぎなくて、むしろ可愛い 。
 - これ一つ着けるだけで、他のアクセサリーが要らないくらいの存在感がある。
 - 思ったよりちゃんと指が曲がる。最初は重いけど、慣れればスマホも普通に打てる 。
 
悪い口コミ
- 邪魔。とにかく邪魔。日常生活で不便すぎてもう着けてない。
 - スマホが本当に操作しにくい。あと、ペットボトルの蓋が本気で開けにくい。
 - 重い 。長時間着けてると、指が疲れてくるし、夕方むくむと外すのが大変。
 - 関節部分が蒸れて夏場はかゆい。金属アレルギーの人は絶対無理だと思う。
 - 飲み会で「何それ?指どうしたの?」ってイジられて恥ずかしかった。やっぱりTPOを選ぶ。
 
アーマーリングがおすすめな人
ここまでの分析を踏まえ、アーマーリングのマイナス面を理解した上で、それでも「おすすめできる」のはどのような人か、具体的に解説します。
地雷系やV系など、特定のファッション世界観を貫く人
アーマーリングが「ダサい」「痛い」と評価されるのは、あくまで一般的なファッション(オフィスカジュアルやきれいめカジュアルなど)から見た場合です。
しかし、パンク、ゴシック、ヴィジュアル系(V系)、あるいは現代の地雷系といった特定のファッション・カルチャーにおいては、アーマーリングは「ダサい」どころか「必要不可欠」なアイテムとして機能します 。
これらのスタイルは、非日常性や中二病的な世界観をあえて表現するものです。
そのため、アーマーリングの持つコスプレ感や、日常から浮いたデザインこそが、そのファッションを完成させるための強力な武器となります。自分のスタイルを貫く覚悟がある人にとっては、最高のパートナーとなるでしょう。
『NANA』やヴィヴィアンのカルチャーが好きな人
「時代遅れ」という評価は、裏を返せば「その時代を象徴する歴史的なアイテムである」ということです。
アーマーリングの背景にあるヴィヴィアン・ウエストウッドのパンク精神や、『NANA』が描いたカルチャー に強く共感し、その物語ごと愛せる人にはおすすめです。
これは、流行っているから着るのではなく、「自分が好きだから着る」という確固たる意志の表明です。その自信とアイテムへの愛情が、周囲の「時代遅れ」という評価を「スタイルがある」という評価に変える力になります。
アクセサリーをコーデの「主役」にできる上級者
アーマーリングは、決して脇役にはなれないアイテムです。その圧倒的な存在感を「主役」として考え、他の服装やアクセサリーを脇役として引き算できる、ファッション上級者に向いています 。
例えば、あえて他のアクセサリーを一切着けず、服装を極限までシンプルにする、といった高度なバランス感覚が求められます。
このアイテムを「着こなす」のではなく、アイテムの強さに「負けない」コーディネートを組める人であれば、その個性を最大限に活かせます。
アーマーリングがおすすめできない人
一方で、アーマーリングの特性を考えると、購入を推奨できない人もはっきりと存在します。
PC作業や家事など、TPOや「実用性」を重視する人
口コミで散々指摘されている通り、アーマーリングは「圧倒的に不便」です 。
もしあなたの日常生活が、パソコンのタイピング、スマートフォンでの頻繁なやり取り、料理や掃除といった家事など、指先をよく使う作業で占められている場合、アーマーリングはストレスの原因になる可能性が非常に高いです。
「おしゃれは我慢」とは言いますが、アーマーリングが要求する我慢は、現代生活においてあまりにも大きいかもしれません。
また、職場やフォーマルな場など、TPOが最優先される環境に身を置く人にもおすすめできません。その戦闘的なデザイン は、ビジネスシーンでは「不適切」「威圧的」と受け取られるリスクがあります。
「ダサい」「時代遅れ」という他人の評価が少しでも気になる人
この記事を読んで「やっぱりダサいって思われるんだ…」と少しでも不安になった人、つまり「他人の評価が気になる人」には、アーマーリングはおすすめできません。
このアイテムは、着ける人に100%の「自信」と「覚悟」を要求します。
少しでも「これ、痛いかな?」「浮いてないかな?」とオドオドしながら着けていると、その不安が周囲に伝わり、「ダサい」という評価を増幅させてしまいます。「着られている」状態が一番、格好悪く見えてしまうのです。
「他人にどう思われようと、私はこれが好きだ」という強い意志を持てない限り、この指輪の強烈な個性に負けてしまうでしょう。
アーマーリングのおすすめポイント
アーマーリングには、マイナス面を補って余りある、強烈な魅力(おすすめポイント)も存在します。
これ一つで「主役」になれる圧倒的なデザイン性
アーマーリングの最大の魅力は、その「主役」になれるデザイン性です 。華奢なリングをいくつも重ね着けするより、アーマーリングを1つ着けるだけで、その日のコーディネートが完成します。
そのゴツく、重厚なデザインは、他のどんなアクセサリーにもない強い意志と世界観を放ちます。
「普通」や「無難」で終わりたくない、自分のスタイルを明確に打ち出したい人にとって、これほどパワフルなアイテムは他にありません。
カルチャーを「まとう」という満足感
前述の通り、アーマーリングは単なる銀の塊ではありません。ヴィヴィアン・ウエストウッドが込めたパンクの精神性や、『NANA』という作品が描いたカルチャーそのものを「まとう」行為です 。
流行のアイテムを消費するのとは異なり、「自分はこのカルチャーの一員である」というアイデンティティを表明する、お守りのような満足感を与えてくれます。この歴史や物語への共感こそが、アーマーリングを所有する大きな価値と言えます。
「脱NANA」を果たした、現代的なデザインの登場
「ダサい」「時代遅れ」という評価の多くは、2000年代に流行したゴツいデザインのイメージに固定されています。しかし、現代ではそのイメージを覆す、洗練されたアーマーリングも登場しています。
例えば、日本のブランド「e.m.(イーエム)」は、アーマーリングにパールやキュービックジルコニアを組み合わせることで、ハードな印象を中和し、上品で洗練されたアイテムへと進化させています 。
また、「soerte.(ソエルテ)」のように、無駄を削ぎ落としたミニマルなデザインのアーマーリングも登場しています 。
「ゴツいのは嫌だけど、あのシルエットは好き」という人は、こうした現代的にアップデートされたデザインを選ぶことで、「時代遅れ」の批判を回避しつつ、アーマーリングの魅力を楽しむことができます。
アーマーリングのおすすめアイテム
最後に、これまでの分析を踏まえ、具体的なおすすめアイテムを3つの方向性で紹介します。
【王道にして原点】Vivienne Westwood (ヴィヴィアン・ウエストウッド) “ARMOUR RING”
アーマーリングを語る上で、このアイテムは外せません 。『NANA』で主人公が着けていたのもこのモデルであり 、まさに「王道にして原点」です。
シルバー925を使用したずっしりとした重み と、丸みを帯びた独特のフォルム、そしてブランドの象徴であるオーブの刻印が特徴です。流行や実用性を超えて、このリングが持つ「物語」を愛する人、本物を求める純粋なファンにおすすめします。
【洗練された再構築】e.m. (イーエム) “パール・ジルコニア” モデル
「ゴツい」「痛い」というアーマーリングの弱点を、「上品」さで克服したのがe.m.のモデルです。
ハードなシルエットはそのままに、関節部分にパールやジルコニアをあしらうことで、エレガントな印象をプラスしています 。
従来の武骨なイメージを払拭し、「アーマーリングに挑戦したいけれど、NANAっぽくなりすぎるのは恥ずかしい」と感じる人に最適な、現代的な選択肢です。
【国産ハード系の選択肢】DEAL DESIGN (ディールデザイン) “シェードアーマーリング”
ヴィヴィアンのパンクな雰囲気とは異なる、国産シルバーアクセサリーブランドならではの「ハード系」を追求するのがDEAL DESIGNです 。
「シェードアーマーリング」 などは、ヴィヴィアンの丸みのあるデザインとは対照的に、よりシャープでエッジの効いた、メカニカルな印象を与えます。
ロックテイストやV系ファッションとの親和性が非常に高く、「パンク」よりも「ロック」なテイストを求める人、鋭利なデザインが好みの人におすすめです。
まとめ
アーマーリングが「ダサい」と言われる背景には、「時代遅れ」(NANAブームの終焉)、「痛い」(中二病的なデザイン)、「安っぽい」(模倣品の氾濫)、「野暮ったい」(実用性の欠如)といった、複数の明確な理由が存在するようです。
これらのネガティブな評価は、主にTPOをわきまえた一般的なファッションの視点から見たものです。もし購入を迷っている理由が「他人の目」であるならば、このアイテムの着用は難しいかもしれません。
しかし、アーマーリングは、地雷系やパンクといった特定のファッション世界観を表現するためには最強のアイテムであり続けます。また、その背景にあるカルチャーを愛する人にとっては、流行を超える価値があります。
近年では、e.m. のように上品に再構築されたモデルも登場しており、「ダサい」と言われたかつてのイメージを払拭する選択肢も増えています。
この記事で解説した「おすすめできる人・できない人」の基準を参考に、自分がなぜアーマーリングを欲しいのか、その「覚悟」と「スタイル」を再確認してみてください。

